約 3,882,657 件
https://w.atwiki.jp/c-atelier/pages/1486.html
Recipe020 ◆TAI2.kX92w シリーズ:モナーブルグ聖教会 ツィールト ノートン ノートンの部下 ルーシィー 作品 実際に読む(リンク) シリーズ:モナーブルグ聖教会 前話とある教会にて3 次話とある教会にて5 概要 錬金術 カッコ悪い byルーシィー レシピ追加 No.311 トラップ縄な(トラップな罠) 登場キャラ 登場 ノートン ノートンの部下 ツィールト ルーシィー 元ネタ解説 107 ノートン「そんなことより燬よ、~」 超有名コピペ「 吉野家コピペ 」が元ネタ。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1412.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある男の本気告白 第5話「決戦前夜」 気づけば、美琴は寮のベッドの上にいた。 頭の中がぐちゃぐちゃでどこをどうやって帰って来たのかも覚えていない。 頭の中で再生されるのは、妹の左手の薬指にあった指輪とそのときの妹の幸せそうな顔。 (なんで、私じゃないの…) 何度目になるのかも分からない疑問が胸を締め付ける。 なんで、私じゃないのか――― なんで、妹なのか――― なんで、なんで、なんで―――!!! なんで―――なんて… 「…決まっているじゃない。会えばいつもビリビリして、怒鳴って、怒って、追いかけ回して…。そんな子のことをアイツが好きになってくれるわけないよね…。」 涙が溢れそうだった。 でも、泣くわけにはいかない。 (せっかく妹が、幸せを掴んだんだから、私が祝福してあげないと…私はあの子の「姉」なんだから! 明日からは今までの『御坂美琴』に戻ろう。『学園都市第3位』で『常盤台中学校のエース』としての『御坂美琴』に。) そう誓ったのに、まだ涙は消えない。 まるで、美琴自身の未練や嫉妬が消えないように。 私、明日から笑えるよね。と不安に思いつつ失笑し、気を失うように美琴は眠り込んだ。 そのころ上条はファミレスで女子3人に囲まれていた。 青髪ピアスあたりであれば絶叫して喜びそうな状況だが、上条の顔色は悪い。 というか、病人の顔色に近い。真っ青になり今にも気絶しそうだ。 今までいくつもの戦場を渡り歩き(本人の意思とは関係無く)、首謀者の企みを右手1本で打ち消して来た人とは思えない。 しかし、そのような状況になってもしかたがないというか男なら同情するだろう。 なぜなら、同席している他の3人が鬼も逃げ出さんばかりの表情をしているからだ。 正面左側では佐天は普段の活発な印象が消え、獲物を前にした肉食動物のような表情をしているし、正面右側では初春は笑顔のままでこそあるが、あたりに放つ威圧感が半端無い。 そして、正面にいる黒子はというとすでに指の間に銀の針を構えた状態で、気炎を吐きながら座っている。 (不幸だ…) 上条はそう思った。 「さて、上条さん」 口火を切ったのは初春だった。 ここから上条の本当の地獄が始まる。 「…なんでせうか?」 「はっきり聞きます。御坂さんに何かしましたか?」 いきなり核心をつかれ、上条は焦る。 説明するのは簡単だが、そうなると妹のことも説明しないといけなくなる。 美琴の友達とはいえ、あんな血なまぐさいことを説明するのは気が引けるうえに、美琴の思いとも反することになる。 そう思い、どう説明するかと上条が考えていると 「上条さん、何で御坂さんは走って、しかも泣きそうになりながらお店を飛び出していったんですか?」 佐天の表情からは純粋に美琴を心配していることが伝わって来る。 他の2人の表情からもそのことが伝わって来る。 上条は店内であったことを全て話した。 しかし、妹の事を伏せて。 「なるほど、御坂さんの勘違いですか…」 「まぁ、結論としてはそうなるけど…」 「…」 3人とも分かってくれたみたいで上条はホッとした。 しかし、『理解』と『納得』は異なる。 「でも…」 佐天が言葉を続けようとしたとき――― 「お姉様を泣かせた罪は万死に値しますのーーー!!!」 今まで黙って話を聞いていた黒子が突然叫んだ。 「この類人猿がっ!!お姉様を泣かせるなんて例え地球が反対に回転しだしたとしても行ってはならない行為!!しかも、その理由が他の女性とイチャイチャしていたからとは!!類人猿ではなくただの猿でしたのねっ!!!まったく最低ですわっ!!!」 言うだけ言ったあと、黒子は席を立ち 「寮に戻ってお姉様の様子を見てきますのっ。」 とテレポートをして消えた。 上条は寮のベッドの上で寝転びながら、今日の出来事を振り返っていた。 あの後すぐ、残された佐天と初春はこれ以上話すことはないと感じたのか、席を立った。 初春は去り際に 「御坂さんに連絡してみたらどうでしょうか?」 と言っていたが、どの面して連絡なんかするんだ。と思い、上条は連絡していなかった。 気づけば、21 30になろうとしていた。 「はぁ…」 ため息をつく。誰かが『ため息1つで幸せが1つ逃げていく』と言っていたが、ため息もつきたくなる心境もあるだろうと1人思う。 (アイツとはなんもねぇんだって!!俺が好きなのはお前だよ!!なんて言えたら、美琴の奴なんて思うかな?) 怒られるかもしれない、フラれるかもしれない。 だが、今までの関係が今日の出来事で崩れてしまうのは嫌だった。 (でも…) ネガティブな考えが頭をよぎる。 思考のループに入りそうになったときだった。 『アイツは関係ない!!俺が好きなのはお前だけなんだ!!』 誰もいないはずの部屋から自分の考えていたことが声になって聞こえた。 焦った上条が発生源を探すとテレビがついていて、普段なら見ないドラマが映し出されていた。 『そんなの信用出来ないっ!鋼手の周りには女の子いっぱいいるし。』 『明日、21:00に駅前のイルミネーションの前まで来て欲しい。俺はずっと美琴のこと待ってるから。』 何故か目が離せなくなった。 そして思いついた。 美琴に謝る方法を、自分の気持ちを伝える方法を。 ケータイを取り、上条はメールを打つ。 アドレスはもちろん『御坂美琴』宛て。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある男の本気告白
https://w.atwiki.jp/secondlife-b/pages/179.html
[カテゴリー] - とある飛空士への恋歌 ニュース01 「となりの関くん」と「とある飛空士への恋歌」 テレビ未放映地域の イオンシネマ6館で上映会 - アニメ!アニメ!Anime Anime 空飛ぶ島の学園ファンタジー! 導入に若干難ありか? アニメ『とある飛空士への恋歌』クロスレビュー[5.3/10点] | ガジェット通信 GetNews - ガジェット通信 「コミックマーケット85」企業ブースに初出展!「弱虫ペダル」 「Z/X IGNITION」 「とある飛空士への恋歌」限定・先行グッズアイテム販売! - PR TIMES 「とある飛空士への恋歌」第1話先行上映イベントをレポート - okmusic UP s 1月アニメ『とある飛空士への恋歌』ファンと一緒に“出航式” - ORICON STYLE TVアニメ『とある飛空士への恋歌』作品本編に登場する飛空服<フライトジャケット>を放送に先駆け12月13日(金)よりトムスショップにて予約受付開始! - PR TIMES 「とある飛空士への恋歌」 シリーズ第2弾がテレビアニメ化、2014年1月放送予定 - アニメ!アニメ!Anime Anime TVアニメ「とある飛空士への恋歌」 悠木碧、竹達彩奈 他メインキャスト決定! - PR TIMES 恋と空戦の物語,ついに完結。「放課後ライトノベル」第30回は『とある飛空士への恋歌5』で“空の果て”へ - 4Gamer.net ラノベ質問状:「飛空士」シリーズ 魅力は「恋と空戦」 読者の反響で続編 - まんたんウェブ ニュース02 「となりの関くん」と「とある飛空士への恋歌」 テレビ未放映地域の イオンシネマ6館で上映会 - アニメ!アニメ!Anime Anime 空飛ぶ島の学園ファンタジー! 導入に若干難ありか? アニメ『とある飛空士への恋歌』クロスレビュー[5.3/10点] | ガジェット通信 GetNews - ガジェット通信 「コミックマーケット85」企業ブースに初出展!「弱虫ペダル」 「Z/X IGNITION」 「とある飛空士への恋歌」限定・先行グッズアイテム販売! - PR TIMES 「とある飛空士への恋歌」第1話先行上映イベントをレポート - okmusic UP s 1月アニメ『とある飛空士への恋歌』ファンと一緒に“出航式” - ORICON STYLE TVアニメ『とある飛空士への恋歌』作品本編に登場する飛空服<フライトジャケット>を放送に先駆け12月13日(金)よりトムスショップにて予約受付開始! - PR TIMES 「とある飛空士への恋歌」 シリーズ第2弾がテレビアニメ化、2014年1月放送予定 - アニメ!アニメ!Anime Anime TVアニメ「とある飛空士への恋歌」 悠木碧、竹達彩奈 他メインキャスト決定! - PR TIMES 恋と空戦の物語,ついに完結。「放課後ライトノベル」第30回は『とある飛空士への恋歌5』で“空の果て”へ - 4Gamer.net ラノベ質問状:「飛空士」シリーズ 魅力は「恋と空戦」 読者の反響で続編 - まんたんウェブ 関連ブログ #blogsearch 関連ブログ02 #blogsearch2
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/813.html
とある少女のういういdays 【本文】 ― 1 ― ― 2 ― ― 3 ― ― 4 ― ― 5 ― ― 6 ― ― 7 ― 【著者】 ほのラブ同盟(7-245)氏 【初出】 2010/04/06 初投稿 【最終スレ投下日】 2010/05/02
https://w.atwiki.jp/animekininaru/pages/56.html
超能力が科学によって解明された世界。能力開発を時間割り(カリキュラム)に組み込む巨大な学園都市では、能力者はその能力によってレベル0からレベル5 の6段階に分けられている。その街に住む高校生・上条当麻はなんの力ももたないレベル0だったが、そんな彼のもとに、純白のシスターが現れた。彼女はインデックスと名乗り、魔術師に追われていると言う。こうして、上条当麻はオカルトの世界へと足を踏み入れる。 とある魔術の禁書目録画像検索 とある魔術の禁書目録動画検索 とある魔術の禁書目録クチコミ #bf とある魔術の禁書目録関連ブログ検索1 #blogsearch とある魔術の禁書目録関連ブログ検索2 #blogsearch2 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/339.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある実家の入浴剤 そこはとある学生寮の一室だ。一見して、家具が少ないこと以外に特筆すべ きことのないような普通の部屋。部屋の主は変哲ない十六歳の高校生であり、 今は夕食の後片付けをしている。節電のためかテレビやオーディオの類は点い ておらず、だから室内には水道と食器の重なり合う音しか聞こえない。 ――はずだった。 「こうげきぃーなんだよ!」 「やめなさいってば、こら! いくら後湯だからって洗濯にも使うっつってん だから!」 「ふふふ! みこと、油断は禁物なんだよー。晩餐も浴槽も戦場なんだから!」 「いや、アンタにとって食卓が戦場ってのはわかるけど。浴槽ってのはなによ その取って付けた感の。……もしかして胸の話?」 「むー! 自分がほんのちょっと大きいからってなんでもその話題に繋げるの は無粋の極みかも。なんだかとうまにそっくりなんだよ」 いや、インデックスサン? ワタクシ上条当麻は貴方の前でそんな話ほとん どしてませんことよ? と、上条はバスルームから漏れ出る会話に心の中でツ ッコむ。 「へ、へえー。あの馬鹿いつもそんなこと言ってるんだー?」 「とうまはいつも・いっつも・いーっつも女の子と一緒にいるけど、そういえ ばおっぱいの大きい子が多いかも――って! みことの髪がなんだかバチバチ してるんだよ! とうまーとうまあああ!」 「いつもいつもどうしてトラブルに巻き込まれてるんだろうって思ってたけど、 現実はただの巨乳好きかこのボンクラがアアああああ!」 「御坂アアあああ! 風呂ン中でビリビリすんじゃねえって言ってんだろうが あああああ! あと、勝手に自分を巨乳にカテゴライズしてんじゃねええええ!」 近所迷惑も甚だしい絶叫祭りだが、上条がそう罵倒したところで彼の末路は 決まったようなものだ。 ズバアン!と浴槽の扉が開き、いつものように雷撃の槍は台所めがけて襲い かかる。それが上条の右手の前に消え失せてしまうところまで、いつも通りに。 「ふ、ふふーん。上条さんのイマジンブレイカーにかかればレベル5の電撃も 妄想巨乳も全く無意味なんですことよー。それと御坂部屋ではちゃんと服を着なさい」 内心心臓バクバクでそんなことを言っているだが、体(てい)としては冷静 に攻撃を防がれ冷静にタオル一枚の状態を指摘された美琴は、地団太を踏んで 悔しがりつつ恥ずかしさに悶え真赤になるという離れ業を成す。というか自分 で飛び出してきたわりに本気で恥ずかしがっているので戸惑った上条は、そろ そろ美琴のフォローに入ろうかと考えた。 しかし、そんな思いは俯いたまま上条に近付いてきた美琴の拳にかるがる打 ち壊される。 「死ね! このスケベ大魔神がアアああああ!」 能力は効かなくても物理攻撃は効く。そんな往年のRPGのような仕掛けは すっかり明かされてしまっている上条であった。 さて、なぜ美琴とインデックスが上条宅の風呂を使用していたのか。事の発 端は一週間ほど前、美琴宛てに宅配便が届いたことに由来する。 「入浴剤?」 実家の母から送られて来た荷物の品名欄にはそう書かれていた。中をあらた めてみると確かに、例の水墨画のような筆致で描かれた温泉風景がパッケージ の、老舗の入浴剤セットが二箱入っている。20包入り×2だから40回分で ある。 母に問い合わせてみると、懸賞で10セット当たったので送った、とのこと だった。 しかし、美琴の感慨は微妙なものだ。 「入浴剤っつっても結局ただの化学成分だしねー」 はなから風流を否定していそうな物言いだが、美琴が言うのも無理はない。 入浴剤というと薬用と観賞用の二つに大別されるだろうが、学園都市では湯治 の研究もあり例によって外の技術と一線を画しているし、観賞用に至っては『星 屑ジュエリー(星を模したキラキラしたものが入っている)』とか、『夢の泉(温 度と効果時間によって色が一万通り以上に変化する)』など、色・香り・感触と いった様々な効果を演出するアイデア商品が普通に市販されている。黒子が『ぬ るぬるジェリーバス』などという明らかに用途の違うものを持って帰って来た 時に至っては、美琴はその俗物を黒焦げの炭にして頭を抱えたものだ。 とにかく、だから、今さら青とか緑とか単色の風呂で喜ばれることなどない し、さすが老舗だけあって鼻が利くのか早くから学園都市からの技術提携も受 けていたらしいが、それも本家本元の最先端にあってはたかが知れるというも のである。 「それ以上に、こんなもん使ってたらいつ黒子に細工されるかわかったもんじ ゃないし……」 黒子はかつてパソコン部品と称した怪しげな薬品を取り寄せていたことがあ った。美琴が直接その毒牙にかかることはなかったのだが、誤って服用した黒 子に絡まれて散々な目に遭ったのだ。黒子が何か企む限り美琴に面倒な被害が 訪れることは自明なのである。 不幸だ、とどこかの誰かを真似して口にしてみて、美琴は閃く。 「――で、御坂さんは上条家のバスルームを使用させてくれと、そうおっしゃりたいわけなのですね?」 立ってるものは犬でも使え。馬鹿とはさみは使いよう。この場合、はさみは 入浴剤ということになるか。 こんな次第で、とある馬鹿高校生にお願いしようと考えた美琴である。 「そ、そうよ! 入浴剤があるのは良いけど、常盤台の寮って基本的に大浴場 とシャワールームしかないし、そもそも学業に必要ないからってそこんところ 重要視されてないのよ。だからって捨てるのはもったいないし、わざわざ一回 一回ホテルの部屋借りるなんて馬鹿馬鹿しいじゃない。だいたい常盤台のお嬢 様とおんなじお風呂に入れるってんだから、アンタむしろ地面に頭こすりつけ て感謝したって良いぐらいなのよ?」 早口で理由をまくし立ててついでに高飛車な態度まで発動させている美琴で あるが、心臓はエンスト寸前まで加速し視線は上条を直視できていなかった。 一歩下がって頭を冷やしてみるとこれはデートに誘うとかよりもかなり大胆な 行動だったはずで、恋は盲目というか美琴の場合は猪突猛進というか、賢明な 順序やら戦略など皆無だった。 まあそんな美琴の異常事態など露知らずに、上条は常盤台のお嬢様のリッチ さに戦慄していたのだが。 「で。ど、どうするのよ? 嫌だってんなら別に良いけど、これって疲労回復 効果もあるみたいだし、不幸続きのアンタをちょっとは癒してくれるんじゃな い?」 興味のないフリをしつつも上条の身体を気遣っている辺りが美琴のやさしさ である。彼女は学園都市の誇るツンデレ使い(ツンデリックマスター)のレベ ル5であり、いつも念能力で言うところの「円」のような重ね技ばかりを使う 高位能力者だ。もっとも主人公補正のかかったスルースキルを体得している上 条にとってはそれすら児戯にも等しいこと。だいたい美琴が絡んできているこ とからすでに「不幸だー」と呟いている上条にしてみれば、気遣われても仕様 のないところはある。 上条の返事をそわそわしながら待ち続けた(時間にしてだいたい数秒)美琴 は、業を煮やして腕をバチバチさせる。 「だーもーどうすんのよ!? 男だったら迷ってないでさっさと決めなさい!」 自分で自分の台詞を深読みして頬を染めた美琴に対し、上条はおっかなびっ くり口を開く。 「いやいやあの美琴さん? 思いもよらぬお申し出で上条さんはとっても嬉し いのですが、いくつかの説明と突破しなければいけない関門がございまして……」 「はあ? なんなのそれは言ってみなさいよ」 などとは言われつつも上条は口をつぐむ。美琴が家に来るなら当然そこには インデックスという猛禽類がいるわけで、このまま美琴を連れていくと、上条 がビリビリと噛み付きの波状攻撃を受けることは必至である。 とどのつまり問題は、いかようにして美琴の申し出を断るかOrインデック スをなだめるかの二通りになる。上条は悩んだ。美琴のお願いを断ると後が怖 そうだし、けれども連れていった時点で問題はネズミ算式に増えていくことだ ろう。 ――よし、断ろう。ビリビリは怖いけど右手を使えばなんとか無傷で事を済ま せることができるし、板挟み状態になるよりは生存率が高いはずである。 上条はそう決心して、 「とうまー。今の話を総合すると、短髪がウチにくるってこと?」 「おわあ! イ、インデックスさん!? いつのまに後ろに……」 「その子ならさっきから後ろにいたわよっていうか『ウチ』って響きが気に入 らないんだけど。いったいどういうことよ? その子はアンタの何なの?」 美琴が詰め寄ってきて上条はだらだら汗を流し、何とかごまかせないかと頭 をフル回転させたが、無情にもインデックスが言う。 「前にも言ったけどとうまは私の命の恩人で、一緒に住んでるんだよ?」 「インデックスぅ! それだといろいろ説明不足だけど俺もそれ以上なんて言 ったらいいかわかんないだって馬鹿なんだモン!」 「はあ、もうアンタは。もっとちゃんと言ってくれなきゃわかるもんもわから ないでしょうが」 ビクビクして身体をくねらせていた上条に、美琴はため息をつく。 「その子が何かワケありだってのは私もわかってるわよ。学園都市のIDは不 自然なとこばっかりだったし、なんでアンタのウチに居候しているのかとかぜ んぜん腑に落ちないんだけどね、今はまだ良いわ。……一応、確認しておくけ ど。一緒に住んでるのはそういうゴタゴタと関係してるからなのよね?」 「へ? あーいや、そうだけど」 一瞬バチリと発電した美琴に一歩下がりつつ、上条は肯定する。 実際、美琴が調べたインデックスの素性はわけのわからないものだった。ま ず名前からして『Index-Librorum-Prohibitorum』である。日本語にして 「禁書目録」というのは宗教関係者にしても、いやそうだからこそよりおかし な名前だ。年の頃合いは美琴とそう変わらないだろうにどこの学校に所属して いるでもなく、その経歴はすべて白紙で、データベース上にシールを貼り付け たみたいに、上っ面だけこの学園都市に存在を認められている。電脳上をハッ クしてインデックスの情報まで辿り着いた美琴の感想は、おおよそそんなとこ ろだった。密入国者が偽造パスポートを持っているようなものではあったが、 しかしこんなふざけた偽造パスポートも存在しない。何にせよ、そこで手詰ま りである。書かれていない文字を読むのは不可能なように、入力されていない 情報を得ることはできない。もっと可能性のある場所にジャンプすることだっ て出来なくはなかったが、ちょっとどんな奴か知りたい程度で底なし沼に足を 踏み入れるような行為をするつもりは、美琴にはさらさらなかった。 ――それにしても、「最近気になるアイツとよく一緒にいる女の子」について調 べるためにデータベースをハックしてどのカテゴリにも属さないIDを発掘し てくるのだから、このツンデレールガンはいつヤンデレールガンにクラスチェ ンジするかわかったものではない。誰も美琴の所業などは知らないので、それ が指摘されることはまずないのであるが。 ともあれ、上条にしては幸運なことに美琴からなんやかやと言われる事態は 避けられたらしい。そうなるともちろん、次に問題となるのは銀髪噛み付きシ スターである。 「とうま、私は納得できないかも。どうして短髪がウチに来るの」 ほらきた。 「だからお風呂を使わせてほしいんだってば。入浴剤がもったいないんだもん」 なんだか両者に不穏な空気が漂い始めているのをひしひしと感じる上条であ る。というかここまで来てなんだが、上条は自分がどうしてこんなに頭を悩ま せているのかわからない。バスルームを使ってよいかを問われただけなのにな んでこう理不尽に詰め寄られねばならないのか。 不幸だ、声には出さず呟くがそんな心情などお構いなしに彼女らは話を進める。 「入浴剤なんて怪しげな薬を使ってとうまを籠絡しようだなんて私は許さない んだから。科学の力なんてぜんぜん信用できないんだよ。それにお風呂ってこ とは夜に来るかもってことで、ご飯も一緒に食べるかもしれないということで 私の食べるものが減ってしまうかもしれないんだよ。私はそんなこと全然気に してないけど、いつも貧乏で飢えているとうまにそんな負担はかけさせられな いかも」 インデックスの優しい台詞に、上条は怒りと悲しみで涙を流しそうになった。 まあすでに捨て置かれている感の強い上条なので、そんな苦悶の表情など誰も 気にはしない。 インデックスの台詞は滅茶苦茶で誤解されそうなところばかりだったが、「籠 絡」というのは美琴の所与の目的としては違わないでもない。頬を染めつつた じろいでから、美琴は今さらになって気が付いた事実を口にする。 「そっか、そうよね。学校帰りってことになるんだから、アンタのウチに行け るのは早くて夕方になっちゃう。じゃあさ、ただお風呂を使わせてもらうって のも悪いし、私が晩ご飯作ってあげよっか? アンタお金に困っているみたい だし、材料は私持ちでさ。今より絶対お腹いっぱい食べられるわよー?」 「ええ!? そんな棚ぼたイベント、本当に上条さんが味わっても良いんでせ うか?」 「良いって良いって。お嬢様マネーなめんなよー? 高位能力者と他の待遇の 違いぐらい、アンタだってよくわかってんでしょ。……それに。アンタだって 馬鹿なりにがんばってるんだから、これぐらいは日の目を見たって良いはずな のよ」 なぜかちょっと憤慨したような口調で言葉を閉じた美琴の傍で、インデック スは「わーい、ごっはん♪ ごっはん♪」と小躍りしている。相変わらず魔術 と食の絡んだ嗅覚については異様に鋭い銀髪シスターであった。 美琴とインデックス、二人は上条の前を歩いている。犬猿だった空気も何の その、並んで歩く様はまるでご近所のお姉ちゃんとチビのようだ。わけのわか らない内に話がまとまって安堵していた上条は、ふと気が付く。 (あれ、俺は何にもしてないのに全部が丸く治まってるぞ? どうなってんだ??) さすが常盤台の称号は伊達ではない。御坂美琴、侮りがたしである。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある実家の入浴剤
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1909.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の猛烈恋慕 ~今すぐキス・ミー~ 御坂美琴は悶々としていた。 原因はわかっている。しかし、どうしたものかわからない。 正面に座っている愛しい彼―上条の顔をみつめる。 彼はあたしの作った夕食に夢中で、見つめているのに気づいていないようだ。 特徴的な髪型、どこか気の抜けた人のよさそうな目、そして、唇・・・ 美琴の視線はそこから動かずにあった。上条の顔、というよりは彼の唇をじっと見つめていた。 (このバカは・・・人の気も知らないで・・・) 料理と、それを作った美琴に対する賛辞の言葉を述べながら上条は箸を進める。 そんな彼を、そんな彼の唇をじっと見つめる美琴。 いつもの美琴は、上条が自分の作った料理をおいしそうに食べてくれるのを見ているだけで幸せなのだ。 彼の対面に座り、彼の食べる様子を眺めているだけで、心が満たされるのだ。 が、今日はちがった。いろいろと限界が来てしまったらしい。 (はぁ・・・・) 額を指でなぞり、その指を自分の唇へ持っていき、唇をなぞる。 (キス・・・) 額への口づけ。最初はそれだけで漏電までする始末だった。 だが、恋する乙女はそれだけでは満足できないようになってしまったらしい。 いつもの姿からは想像できないような繊細なくちづけ。予想以上にやわらかな唇。 唇を離した後、彼が見せる最大級の笑顔。おそらく地球上で美琴しかしらない上条の顔。 それらをいとおしく思い続けるうちに、繰り返すうちに、それだけでは物足りなくなってしまった。 我慢の限界は近い。 (キス・・・したいなぁ・・・・・・) 御坂美琴は悶々としていた。 ―とある少年の猛烈恋慕その3― ~今すぐキス・ミー~ (そもそも、アイツがわるいのよ。) 美琴がこうなってしまったことの一端は、確かに上条にある。 男女のお付き合いは清く正しくという名目の下、『高校生になるまでキスは額と頬だけ』という制約を掲げたのは上条だ。 美琴ももっともな理由だと思ったし、彼なりに二人の関係を考えてくれているのが嬉しかった。だから了承した。しかし。 (・・・まさか、アイツがあんなキャラだったなんて・・・///) 上条のスキンシップが美琴から見て激しいのだ。それが我慢の限界を招いた原因だった。 部屋に二人きりでいれば、暇なときはずっと美琴を抱きかかえて膝に座らせ、 抱きついたり、首筋に顔をうずめたり、頭を撫でたり・・・。美琴が普段ぬいぐるみ相手にしていることを、そのまま上条はやり返していた。 そんなことをされれば、当然美琴としてはフラストレーションがたまる一方だ。 お返しにとキスの雨―美琴がそう思っているだけで、実際は日に2、3回なのだが―を上条に降らせていた。 どっこいそれが逆効果。フラストレーションを加速させるだけだった。そのことに美琴は気づいていないのだが。 (・・・どこかで補填しないと、ヤバイわね・・・) 美琴はそんなふうに考えながら、悶々としながら上条のことを見つめていた。 ――――――― (・・・・どうしてこうなった・・・・) 箸を進めつつ、上条は思考をめぐらせていた。 いつもどうりの休日、いつもどうりの美琴の訪問、いつもどおりの夕食・・・だったはず。だが・・・・ (なぜ上条さんはこんなにも見つめられているのでせうか・・・!?なんか悪いことしたっけ・・・?) 鈍感な彼にしては珍しく、美琴が自分のことを見つめていることに気がついていた。 そして、その表情がいつもと違うことにも気づいていた。 上条は脳をフル回転させて、なにか彼女の機嫌を損ねるようなことがなかったかどうかを考えた。が、皆目見当もつかない。 それはそうだろう。彼女は怒っているわけではないのだから。 そういうところにまで気が行かないのは、上条が上条たるゆえんなのだろうが。 (あの表情はいったいなんなんでせう?) いつもとちがう、はかなげで、どこか艶っぽい、自分を見つめる美琴の表情。 その表情に、目線に。美琴の気持ちに気づかない上条は、不安を感じながらもドキドキしていた。 (なんなんでしょう。この麗しいお嬢さんは・・・っと、それどころじゃないんでした!) 「・・・あの、御坂さん?わたくしめの顔になにかついているんでせうか?」 チャンス 空気の転換を図った上条の言葉。『機会』をうかがっていた美琴はしれっとウソをつく 「・・・ごはんつぶついてるわよ。どうやったらそんなところにつくのかしら?」 「え?どこだ?」 「ああもう、そんなふうにしたら擦れちゃうでしょ!・・・と、とってあげるからじっとしてなさい!」 (べ、別に悪いウソじゃないわよ。アンタがわるいんだから!) 誰に向けての言い訳か、心の中でつぶやきながら上条の隣まで寄っていく。 「そんなヘンなところについてるのか?上条さん行儀はいいつもりなんですけど・・・」 「いいから動かない!往生際がわるいわよ。」 近寄って、顔をぐいっと上条の頬に近づける。これから行うことを想像して、にやけているのが自分で解る。 口の端がつりあがるのを止めることが出来ない。例えるなら無防備なガゼルを後ろから狙うチーターの心境。 落ち着こう、獲物は逃げやしないのだ。深呼吸、深呼吸。 すー はー (・・・・・・よし!い、いくわよ!) さらにぐいっと近づく。 一呼吸置いて、動かぬ上条ガゼルめがけて美琴チーターは走り出した。 が、その一呼吸がいけなかった。 「・・・?あの、みさかさ・・・」 「!?」 刹那、不審におもった上条が美琴のほうを向いた。 いざ襲おうと駆け出した瞬間、上条ガゼルは逃げるどころか、美琴チーターめがけて駆け寄ってきた、といったところだろうか。そうなれば当然・・・ ちゅっ 「「・・・・・・」」 チッ チッ チッ チッ チッ 「「・・・・・・」」 見る見るうちに赤く染まっていく二人の顔。お互いに、目を開いたまま、口付けを交わしたまま固まってしまう。 時計の秒針の音が、互いの心臓の音が、部屋に響く。そのまま、時間がすぎていく。 ・・・・どれほどたっただろうか。先に動き出したのは上条だった。 「・・・・み、さか、さん?」 真っ赤な顔で美琴に声をかける。 瞬間、美琴はビクっと反応し、体ごとそっぽを向いてうつむき、ぷるぷると震え始めた。 (・・・幸せだけど、不幸だ・・・) 心の中で二つの意味のこもったため息をつく。約束をしたのに、結局その通りにならなかったことに対するものと、 天岩戸に閉じこもってしまった電撃姫を、どう引きずり出したものかと途方にくれるものだ。 前者は過ぎたことだから仕方がない。後者ははやくなんとかしないと命に関わる。 まずは、優しく話しかけてみよう。 「美琴」 やさしく微笑みながら、体ごと回り込んで、うつむいている美琴の顔を覗き込む。 が ・ ・ .・ .・ .・ ・ ・ .・ ・ それがいけなかった。 『切れて』しまった。 プ ッツ ――――― ン と 真っ赤な顔で優しい笑みを浮かべる上条を見た瞬間、美琴の中の『なにか』が切れた。 カミジョウ ・・・草食動物を目の前にして、本能が理性を焼ききった音。たまりにたまったフラストレーションが決壊する音だった。 「・・・が、・・・・・から・・・」 「・・・・え?」 聞き返す上条に答えず、美琴は上条の左手を取り バ ヂ ィ ッ と、電流を流して上条の四肢を麻痺させる。その余波で部屋のブレーカーが落ち、真っ暗になる。 その場に倒れる上条を抱えてベッドへ放り投げ、押し倒す。 流れるような動作。理性の入る余地のない、本能のままの動きだった。 「み こと さん ?」 シビレる体で言葉を発する上条。 「・・・とうまがわるいんだからね・・・わかってるの?」 上条を組み敷いている美琴の目には、上条の顔しか映っていない。 狩人の目だ。ヒエラルキーの頂点に君臨する動物の、下位のものを蹂躙しようとする目。 「いっつも好き勝手してくれちゃって・・・・でも、今日はそうはいかないわよ・・・・」 「あ の、 きい て ます?」 「だって今日は・・・・あたしのターンなんだからね・・・・ふふ、ふふふふふふふふふふふふ・・・・」 美琴の手が、がっちりと上条の顔をホールドする。 電撃を浴びせられ、じたばたともがくことも許されない上条。ビーストモードの美琴。おまけに部屋は真っ暗。 逃げ場は、ない。答え③・現実は非常である、といったところだろうか。 「は はは」 「とうま・・・・・だいすき・・・・・」 (幸せだけど・・・ものスゴーく幸せだけど、不幸だあぁぁぁぁ!) ・・・その後美琴が満足するまで、上条は蹂躙され続けた。 しかも思いのほか電流がつよかったせいか、上条は病院送りと相成った。 病院に担ぎ込まれた上条は何故か幸せそうな、困ったような表情を浮かべていたらしい。 そんな彼の隣には、心配そうな顔をしながら顔を真っ赤にして、でれでれもじもじと寄り添う電撃姫の姿があったそうだ。 ―とある少年の猛烈恋慕その3― ~今すぐキス・ミー~ おわり 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の猛烈恋慕
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/885.html
ここは第6学区の一角にある倉庫の中。そこにあるのは・・・地獄(せいさい)の実現。 「ギャアアアアアアァァァァッッッ!!!アアアアアアァァァッッ!!!!」 「オラオラオラ!!!もっと、泣け!!喚け!!叫べ!!この林檎ちゃんをもっと満足させろよぉ!!!」 「アンタみたいな出来損ないに恥をかかされた私の身にもなってみなさい、桜・・・!!」 「心配いりませんよ、春咲桜。静かに・・・受け入れなさい」 「そんな理由で救済委員に・・・あなたは風紀委員にふさわしくない!!よって、これはあなたへの罰です!!」 「ガアアアアアァァァッッ!!!!!アアアアアアァァァッッ!!!!!」 地獄の中心にいるのは・・・春咲桜。今彼女は過激派救済委員から制裁という名の暴力に晒されていた。 春咲の左手首には手錠の片方が繋がれ、もう片方はすぐ傍の鉄柱に繋がれている。 『劣化転送』を用いれば手錠を外すことはできるが、林檎の『音響砲弾』がそれを許さない。 現在春咲は林檎と躯園からは殴打を、刈野からは名前の入っていない焼き印を体に押し付けられている。 着用している風輪学園の制服は既にボロボロで、その隙間からは包帯が見え隠れしている。 「自業自得的な報いって言った所かしら?それにしても・・・琉魅、あなたの『絶対挑発』ってホント便利的な能力よねぇ」 「そりゃ、何たってあたしの自慢の能力だもん。救済委員になった理由や目的を吐かせることくらい造作もないって!」 「・・・にしても、ちょっとやり過ぎじゃねぇか?いくら、今後のためとは言え・・・」 「だからこそ、ここで断固たる制裁を与えねばならない。俺達救済委員のためにな」 「麻鬼の言う通りだ。これは、単なる見せしめじゃ無い。金属操作、それはお前も理解した上で、作戦に参加しているのだろう。 それとも・・・お前も『裏切り者』になりたいか?」 「いや・・・なりたかないけどよ・・・」 麻鬼と雅艶の言葉に強く反論できない金属操作。金属操作自身、春咲が『裏切り者』であるという判断に異論は無い。何せ、現役の風紀委員だからだ。 何時春咲から自分達の情報が他の風紀委員に漏れるかわからない。過去に、風紀委員から犯罪人のレッテルを貼られた金属操作にとっては、春咲の行動は許し難かった。 だが一方で、これ程の制裁を与えるのはやり過ぎではないのか?そう考えてしまう自分がいることも確かなのである。 「羽香奈さん」 「何ですかぁ?七刀さん」 「後程あなたの能力と私の能力を併用して、春咲桜の記憶を“断裁”します。その時はよろしくお願いします」 「OKっす!」 羽香奈と七刀のやり取りを見て、金属操作は制裁を受け続けている春咲に目を向ける。春咲は、制裁の終盤に七刀の『思想断裁』により記憶を消されることになっていた。 それは、自分達救済委員の情報が漏れることを防ぐため。そう、雅艶は言っていたが・・・ 「(・・・くそっ!!何だよ、このモヤモヤとした気分はよ!!)」 金属操作の心中に、本人にもわからないモヤモヤが溜まり始めていた。 「カハッ・・・ゴホッ・・・」 「ハァ、ハァ。・・・こんな所かしら。少し休憩しましょうか?」 「賛成~い。躯園姉ちゃん。あたしの手を見てよ。桜を殴り過ぎて赤くなっちゃったよぉ」 「それは・・・血ではないかしら、林檎さん?」 躯園、林檎、刈野による制裁は小休止に入ったようだ。まるで運動後の休憩のような雰囲気を醸し出す3人。 そのすぐ近くに血塗れで倒れているのは・・・春咲桜。何とか意識はあるようだが、その目はもはや焦点が合っていなかった。 「春咲さん。そろそろ“断裁”してもよろしいのですか?」 「・・・まだまだ。こんなもんじゃ足りないわよ、七刀。私が受けた恥辱は・・・こんなもんじゃないんだから!」 「林檎ちゃんもまだ物足りないなぁ。こんな気持ちを味わえちゃうんなら、あたしも救済委員に入ってみようかな~。どうかな、躯園姉ちゃん?」 「あなたなら大丈夫よ、林檎。桜のような出来損ないなんかとじゃあ、話にならないわ。『劣化転送』。私の見立ては正しかった。クズにはお似合いの名前ね、フフッ。 それに引き換え・・・あなたは優秀よ、林檎。『音響砲弾』。いい名前ね。さすがは、私の“唯一の”自慢の妹。愛してるわ」 「ありがとー!!あたしも大好きだよ、躯園姉ちゃん!!」 躯園と林檎のやり取りを、春咲は焦点の合っていない目で見る。あれが、普通の姉妹が描く光景。あれが、普通。 なのに・・・何故自分はこんな目に合っている?何故自分を血を分けた家族は助けてくれない?何故家族の手によって自分は血塗れになっているのか? 「(・・・もう、いいや。全部・・・全部私がいけなかったんだ。こんな、こんな無謀なことをしたから・・・)」 春咲の思考が・・・闇に染まっていく。その色は・・・絶望の色。 「(もう、目を閉じよう。そうすれば・・・あんな光景、見なくて済む。気を失えば・・・痛みも感じない・・・)」 底知れない絶望の深みにその身を沈めて行く。 「(そうだ・・・。もう死んじゃえば・・・こんな思いもしなくて済む。こんな・・・こんなことが続くなら、いっそ・・・)」 春咲は『劣化転送』で近くにあった小石を自分の右手の中に転送した。そして・・・ 「(こ、これを・・・私の頭に転送すれば・・・私は死ぬ。・・・それで、いい。だって、私には・・・もう、これしか・・・)」 自殺。この苦しみから逃れられる手段。春咲は、纏まらない思考の中でその手段に手を染めようと・・・ 『皆のために責任を取るってんなら・・・“死んで”じゃ無くて“生きて”果たせよ、大馬鹿野郎』 「(!!!)」 その瞬間に、頭の片隅から聞こえて来た言葉。それは、かつて界刺が春咲に言った言葉。 『力を証明したいのなら・・・名誉ある死を遂げた英雄としてじゃ無くて、無様に生き残った凡人として証明してみせろよ、春咲桜・・・!!』 自分の行動に“死んで”では無く“生きて”責任を取れ。力を証明したければ“生きろ”。そう言った、言ってくれた界刺。 『レベルなんてどうでもいいだろ?能力の活用ってのは使用者の腕の見せ所さ。例えば「劣化転送」だって、使う奴次第で幾らでも化ける。俺はそう思うよ』 躯園に切り捨てられた己の『劣化転送』を使う人間次第で幾らでも活用できる。そう、教えてくれた界刺の言葉を思い出し、春咲は小石を握り込んだ右手に力を込める。 「(界刺さん。私は・・・私は・・・あなたを信じてもいいですか?こんな出来損ないの私を・・・いつも見てくれていたあなたを、信じさせてくれますか?)」 小石の転送先は、自分の頭では無く・・・躯園。能力を発動した後に待っている地獄は、春咲にも容易に想像できた。だが・・・ 「(最期に・・・私はあなたを信じてみようと思います。“死んだ”じゃ無くて“生きた”私の力を、私自身をあなたに証明するために・・・)」 能力は・・・発動される。 グサッ!!! 躯園は、その時理解できなかった。自分の身に起きた異変を、その瞬間には。 違和感がある。痛みがある。それも、自分の右手から。バンドに覆われた右手から。 だから、バンドを外した。痛みの発生源を見極めるために。急いで。そして、確認する。自分の右手の中心にあったものは・・・小石。 春咲桜の『劣化転送』で躯園の右手に転送された小石。それが、躯園の右手の中にあった。血を噴出しながら。 「アッ、アアッ、アアアアアアァァァッッ!!!!!」 「ど、どうしたの、躯園姉ちゃん!!?」 「春咲さん!?」 「右手から・・・!?は、早く手当てを!!」 躯園は、自分の右手の中に小石があるのを認識した直後に叫び声を挙げる。林檎と七刀は驚き、刈野は躯園の右手から血が噴出しているのを確認し、手当てのために躯園に近付こうとする。 「待て、刈野!!春咲に近付くな!!七刀!林檎!お前達も早く春咲から離れろ!!」 「!?で、でも・・・!?こ、これは・・・!?」 雅艶の指示に困惑する刈野だったが、その意味を理解するのに時間は掛からなかった。 「赤い・・・煙?」 「そうだ・・・。春咲の能力『毒物管理』だ。今奴に近付けばその毒素によってこっちがやられるぞ!! それに・・・今の春咲は痛みで己の能力をうまくコントロールできていない。あれでは・・・」 躯園の能力『毒物管理』とは、人間にとって有害である物質を沈静化した上で体内に蓄える能力である。 躯園は、戦闘時には自らを傷付けることで傷から噴出した赤黒い煙を空気中に撒き散らし、その有害物質によって攻撃を行うという戦法を採っている。 但し、あくまで沈静化しているだけであり、有害物質への耐性を得る能力では無い。 よって、何らかの理由で沈静化できない―『毒物管理』を行使できない―状況になった場合、躯園は自ら溜め込んだ有害物質に体を苛まれる危険性があるのだ。 「グッ!!!シュコー・・・シュコー・・・」 「よし・・・摘出完了っと」 躯園は常に持っているガスマスクを被り、有害物質が含まれる煙を吸い込まないようにした。 次に、煙の範囲外から峠が『暗室移動』による空間移動で躯園の右手に刺さった小石を摘出する。 その上で刈屋から投げられた包帯等で、傷の手当を行った。 「躯園姉ちゃん・・・」 「上下ちゃん・・・これって」 「えぇ。私と同じ的な能力が行使されたみたいね」 「・・・ということは」 躯園の状態を心配する林檎を余所に、峠達は今起きた現実を認識する。 「えぇ。今ここにいる能力者の中で空間移動系能力者は2人だけ。1人は私。もう1人は・・・」 峠の視線の先にいる者・・・それは、未だ倒れているものの、その目を躯園に向けている少女―春咲桜―であった。 「あの『裏切り者』。まだ、そんな余裕があったなんてね。少し感心したけど・・・お返しよ。有難く受け取りなさい」 そう言った後ポケットに手を突っ込み、その中にあったもの―鉛玉―を『暗室移動』にて転送する。転送先はもちろん・・・ ドンッ!!! 「ギャアアアアアアァァァァッッッ!!!!!」 春咲の右手の中心。くしくも春咲が躯園に対して行使した転送場所と同じ場所を峠は指定し、転送したのだ。 「シュコー・・・ハァ、ハァ。七刀・・・」 「春咲さん。傷は大丈夫・・・」 「これ・・・借りるわよ」 「春咲さん!?」 その様子を見ていた七刀に躯園が近付いて来た。その右手には包帯が巻かれている。煙が出ていない所から見ると、手当ては済んだようだ。 「クハッ!!ウウウゥゥッ!!!」 「このっ・・・このっ・・・このっ・・・」 右手に鉛玉を転送されて苦しみの声を挙げる春咲に躯園が歩み寄る。そして・・・ 「このっ・・・出来損ないがああああぁぁぁっっ!!!!!!」 グサリ!!! 「ガアアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!!」 躯園は七刀から奪った日本刀を、春咲の右手―鉛玉が転送された中心―に突き刺したのだ。 「このっ!このっ!!このっ!!!この私に・・・クズが何をしたあああぁぁっっ!!!」 「ギャアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!」 突き刺したまま刃を回転させて―抉るかのうように―傷口を広げていく躯園。これにより、峠が転送した鉛玉は外部に出たものの、傷としては更に深いものとなっていく。 「アアアアアアァァァッッ!!!ウアアアアアアァァァッッ!!!」 「クズの分際でっ!!!出来損ないの分際でっ!!!この私に・・・この私にぃ!!!」 躯園による春咲への暴行は、その後5分程続いた。 「ハァッ・・・カハッ・・・」 「ハァ、ハァ・・・」 春咲はもう碌に言葉すら話せない状態になっている。そんな彼女の目に映るのは・・・腕章。 「あなたには・・・この腕章は必要ないわよね?」 それを持つのは刈野。手には発火能力により構成された火の玉があった。 「えっ・・・?」 「ついでに、この趣味の悪いスーツも燃やしてしまいましょうか。見てるだけで気が狂いそうだわ、これ」 それは、風紀委員の腕章。早退する時に支部に置き忘れたので、界刺に返すスーツを入れていた袋の中に入れてしまっていたのだ。 「ま・・・待って・・・。そ、れだけ・・・は・・・」 「何が『待って』よ。ふざけないで。今のあなたに・・・これを付ける資格は無い!!」 春咲の懇願に気を悪くした刈野は躊躇無く、火の玉を腕章に―ついでにスーツにも―ぶつける。 「ああぁぁっ・・・!!!」 燃えて行く。腕章。1分も経たずに、それは炭と化した。 「さすがにスーツの方は時間が掛かるわね」 「刈野・・・。もし火事になったら危ないわ。そのスーツの火は早く消さないと・・・」 「春咲さん?」 丁度半分程燃え尽きていたスーツを春咲は刈野から奪い取る。そして・・・ 「火は・・・このクズの体を使って消しましょうか!!!!」 「えっ・・・ガァッ!!!痛い!!熱い!!や、やめてええぇぇぇ!!!!」 燃えているスーツを春咲に叩き込む。何度も。繰り返し。その度に、春咲の体に火傷が刻まれて行く。 「ハァ、ハァ。フフッ。やっと消えたわね。クズにしては上出来かしら?クズにしては。フフッ」 「・・・・・・」 「でも・・・火事になる原因はクズでも取り除かないと・・・ね」 「・・・へっ・・・?アアァ・・・!!や・・・め、て」 スーツ“だったもの”を放り投げた躯園は、春咲のボロボロになった制服―彼女の言う所の火事になる原因―に手を掛ける。 そして・・・引き裂いていく。更なる制裁を加えるために。 「うん?これは・・・文字?」 「あ!!それ、あたしが桜に刻んでやったんだ!!うまいでしょう、躯園姉ちゃん?」 春咲の体を覆うように巻かれていた包帯を引き裂いた先にあったもの。それは、文字。かつて林檎が春咲の体に刻んだ・・・“血文字”。 「・・・えぇ。上手にできているわよ、林檎。さすがは私の妹ね」 「へへ~ん。そうでしょ、そうでしょ!」 「・・・七刀」 「・・・はい。何でしょう、春咲さん?」 春咲の体に刻まれた“血文字”見た躯園は、七刀を呼ぶ。そして、提案する。林檎に負けず劣らずの、否、それ以上の提案を。 「このクズの記憶を消すのよね?」 「はい。私達の情報が漏れることを防ぐために」 「だったら・・・そこに追加して頂戴。このクズが、私達春咲家の人間だという記憶を!!できるわよね!?」 「えぇっ・・・?」 春咲は、最初は躯園の提案をうまく理解できなかった。だが、時間が経つと共に、その言葉が、提案の中身が春咲に染み込んで行く。 「えぇ。もちろん可能ですが・・・本当によろしいのですか?」 「・・・いいわよ。こんなクズと同じ血が流れているというだけで虫唾が走るわ。・・・そうね、他にも追加しましょう。例えば・・・このクズが風紀委員である記憶を!!」 「・・・・・・」 「私達や穏健派の連中の記憶も!!本当の仲間・・・この出来損ないが居る風紀委員の連中の記憶も!!春咲家の記憶も!! このクズの名前すらも全部消してやればいい!!そうでなければ、私が負ったこの傷の怨みは・・・晴れはしない!!! 但し、『劣化転送』だけは残しておいてよ。私がこのクズに付けた名前なんだから」 「春咲さん・・・」 躯園の頭の中には春咲に対する憎悪しか無かった。それを知った七刀は頷く。 「いいでしょう。春咲さんたっての望みとあらば、この七刀列衣、持てる力の全てをもって、春咲桜の記憶を“断裁”してみせます」 「そう。ありがとう、七刀。・・・あっ!そういえば、あなたの刀・・・まだあのクズの手に刺したままなんだけど・・・」 「問題ありません。私の『思想断裁』は、刃物であれば何でも行使できますので」 「あっ!あたし、カッターナイフ持ってるよ。これ、よかったら使って下さい!」 「これはこれは。ありがとうございます、林檎さん」 躯園の提案を受諾し、林檎からカッターナイフを受け取った七刀は、春咲の腹の上に座り込む。 「羽香奈さん。準備はよろしいですか?」 「・・・うん。早く終わらそうよ。私・・・気分が悪くなって来たよ」 「わかりました。善処します」 『絶対挑発』による記憶の掘り起こし担当の羽香奈の言葉を受け、早々に“断裁”を済ませようと決意する七刀。 「成程・・・これが先程仰られていた“血文字”ですか・・・。フムフム」 「や・・・いや・・・」 制服もスカートも包帯も剥ぎ取られ、また、包帯を巻いていたがために胸の下着を着けておらず、現状はほとんど裸も同然な春咲に刻まれた“血文字”を観察する七刀。そして・・・ 「では、私も林檎さんにならって“断裁血文字バージョン”で行きましょうか。文字は・・・『風紀委員失格』とか、『不良風紀委員』とか・・・。 フフッ、これでは刈野さんの仕事を私が奪ってしまったような感じになってしまいますね」 七刀の手に握られたカッターナイフが春咲に近付く。 「せめて、一時でも早く苦しみから解放されるよう努力しますので。では・・・行きます」 「やっ・・・いやっ・・・いやっ・・・いやあああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!」 数分後、春咲桜の記憶は・・・“断裁”された。 「さて、最後の仕上げね。刈野。準備はできているの?」 「えぇ。もちろん」 躯園と刈野のやり取りのすぐ近くで、目を虚ろにしてグッタリ倒れている少女がいた。 その身には下半身に着けるボロボロの下着のみ。体は・・・あらゆる傷に覆われていた。 右手には日本刀が刺さったまま、左手は手錠に繋がれている少女は、身動き一つ取れない。否、その力は残っていなかった。 そんな少女を・・・林檎は嬉々と、雅艶・峠・七刀・麻鬼は冷徹に、金属操作・羽香奈は顔をしかめながら眺めていた。 もうすぐ、地獄(せいさい)が終わる。それは、少女にとっての“最後通牒”。 「ほらっ、ちゃんとその目で見なさい!!この出来損ないが!!」 「ぐぅっ・・・」 躯園の足が少女の左頬を踏み付ける。強制的に首を右向きにされた少女は・・・知る。自分に近付いて来る“最後通牒”を。 「情けの1つくらいは掛けてあげるわよぉ、クズ。アンタを殺さないでいてあげる。何故なら、アンタなんかどうせほっといても死ぬような存在だから」 それは、生と引き換えに焼き刻まれる“最後通牒”。その焼き印に描かれた文字は・・・『風紀委員失格』 「アンタは・・・生まれるべきじゃなかった人間。生きている価値が無い人間。この世界に不必要な人間。この世界から・・・いなくなればいい人間」 焼き刻まれる箇所は・・・右腕。そこは、本来風紀委員の腕章が付けられる場所。そこに刻む。二度と風紀委員として生きることができないように。 「じゃあね、出来損ないのクズ。二度と・・・私の前に姿を現さないで頂戴」 “最後通牒”が少女の腕に近付く。少女はもう声も出せない。躯園によって、その焼き刻まれる様を見せ付けられようとする少女の目から涙が零れ落ちた・・・・・・その時!!! 「ウオオオオオオオオォォォォッッッ!!!!!!」 それは、声。それは、男の声。それは、男の叫び声。それは・・・怒りが込められた男の叫び声。 「「!?」」 今まさに少女に“最後通牒”を刻もうとした躯園と刈野が、その作業を中断して振り向く。そこにいたのは・・・己が拳を見せ付けるように仁王立ちする男。 男は少女を見る。少女の体に刻まれた傷を。男は・・・抑え切れない怒りの声を挙げる。 「テメェ等・・・。女1人に大人数で制裁かよ。ふざけんじゃねえぞおおぉぉっ!!!!!」 “救いの手”が存在しなくとも、“自分で立ち上がる足”が存在しなくとも、“己を貫き通す拳”なら、その男―荒我拳―には確かに存在した。 continue!!
https://w.atwiki.jp/c-atelier/pages/1484.html
Recipe020 ◆TAI2.kX92w シリーズ:モナーブルグ聖教会 ツィールト ノマ ノートン ノートンの部下 ルーシィー 作品 実際に読む(リンク) シリーズ:モナーブルグ聖教会 前話とある教会にて2 次話とある教会にて4 概要 おおちんぷよ ばれてしまうとは なさけない ! レシピ追加 No.309 ラジカセ No.310 メッセージウィンドウ 登場キャラ 初登場 ノートンの部下 本編 66 登場 ノートン ルーシィー ツィールト ノマ 元ネタ解説 無
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/147.html
事の始まりは少女の何気ない一言だった。 「ショッピングというものに行ってみたいってミサカはミサカは頼んでみたり」 「あァ?」 茶色いショートカットの少女は病院のベットに掛かるテーブルの上に乗っていた。 青色のワンピースに身を包み、頭頂部から出ている一本の毛が風も無いのに揺れている。 其れに対して眉を顰めるのは少女の目の前でベットに横たわる白髪の少年だ。 見ただけでは男か女か判別不可能の中性な顔立ちと体つき。 学園都市内にその異名を轟かす白の最強能力者―――"一方通行"。 その最強の能力者は現在、目の前の少女を見て面倒臭そうに首を傾げていた。 少女は一方通行の次の言葉を待つかのように輝いた瞳で一方通行を見ている。 「……」 「お?お?もしかして好感触?ってミサカはミサカはかなーり期待してみる」 「寝ろ」 「いえーい!なんか久しぶりに聞いたよ、ってミサカはミサカは久しぶりに拳をつき上げてみたり!」 打ち止めはヤケクソ気味に拳を天に向かって突き出すが、一方通行はそれを面倒臭そうに見ていた。 「そもそも、俺ァまだ動けるような状態じゃねェだろうがよォ」 一方通行は八月三十一日にとある事件に巻き込まれ普通なら死んでもおかしく無いような傷を負っている。 その事件とは、この目の前の少女―――"打ち止め"を中心に起こった事件だった。 とある研究員が埋め込んだウィルスに侵されていた打ち止めを一方通行が自らの傷と引き換えに助けた。 端的に言ってしまえば、そんなところだ。 その間にも色々な話が詰め込まれているのだが、今は割愛するとしよう。 しかし、そのウィルスを消す際に記憶も一緒に消去された筈の少女は事もあろうに自らその記憶を補完して こうして目の前でにこやかな笑顔を一方通行へと向けていた。 その上、何故か事件の後も済し崩しに一緒にいる形となっていた。全く持って謎である。 「あ、その点については大丈夫、ってミサカはミサカは胸を張りつつ言ってみる」 「あン?」 打ち止めはなにやらベッドから飛び降りると病室の隅へと向かう。 其処には何時の間にやら黒い紙袋が置いてあった。 怪しい。とにかく怪しい。 レベルを強いて言うならば、開けるな危険のオーラを醸し出すほどの怪しさだ。 というか、黒い紙袋なんてとてもじゃないが普通の生活では滅多に御目にはかからないだろう。 そして、打ち止めはご機嫌に鼻歌を歌いつつ黒い紙袋の封を開け、中へと手を突っ込んだ。 暫く中を探っていた打ち止めだったが、何か見つけた様に笑顔になり、腕を紙袋から引っこ抜く。 その手にあるのはチョーカーの様な黒い帯の付いた小型の携帯音楽プレーヤーのようなものだった。 じゃーん、と黒い帯の先に付いた小さい棒状の機械の様な物を揺らしつつ一方通行へと向き直る。 「何だァそりゃ」 「演算補助のための変換機ってミサカはミサカはもったいぶらずに答えて見る」 加えて言うが一方通行は八月三十一日の事件で傷を負い、その最強の所以たる能力の大半を失っている。 現在ではこの視線の先でほれほれ、と楽しそうに変換機と呼ばれた物体を揺らす少女と、 その姉妹の様な存在である"妹達"によって演算能力の大半を補っている状態だったりする。 「よし」 「おぉ、アナタがそこまで良い笑顔を見せるなんて始めてかもってミサカはミサカは喜びを体で表現してみたり」 一方通行は彼を知る者が見たならば、即座に裸足で逃げ出すようなとてつもなく良い笑顔で頷きを一つ。 「そこに直りやがれ、クソガキ」 「ひゃっほう、やっぱりこうなるのねー!ってミサカはミサカは現実から目を背けずに嘆いてみる」 打ち止めは其の場でよよよ、と座りながら手で顔を隠して嘘泣きをし始めた。 一方通行は気にせずに寝転がり、頭まで全身を布団で包んで寝る準備をし始める。 「あーッ!ってミサカはミサカは指差して驚いて見る!人が嘆いているのに放置して寝ようとするだなんて、 それでも人なの!?ってミサカはミサカは抗議してみたり!というか、これはアナタのためでもあるんだよー! ってミサカはミサカは必死に叫んでみる!」 「あン?俺のためだァ?」 「そうそう、ってミサカはミサカは内心ホッとしつつ正座してみる」 今まさに飛び掛らんとしていたのか、打ち止めはベッドに掛かるテーブルの上に乗っていた。 そのまま打ち止めは正座しつつ目を閉じて腕を組み、尤もらしく何度か頷く。 「実はリハビリも兼ねてたりするのってミサカはミサカはあのカエル顔のお医者さんが言ってたって言ってみる」 ほほゥ、と一方通行は改めて体を起こし、打ち止めを見やる。 「で、本音は?」 「暇だからどこかに連れてって、とミサカはミサカは正直に本音を――って、ふぎゅっ!?あ、やめてやめて。 布団でくるむのは御勘弁をってミサカはミサカはなんだか前も言ったことあるような台詞を言ってみるー!」 結局カエル顔の医者が回診に来るまでこの馬鹿騒ぎは続くのであった。 ○ そして現在。 「なんで、こうなりやがンだァ!いきなり蒸発するかァ、普通よォ!?」 多くの人々が出歩く街の中心で、病院着から私服に着替えた最強の能力者は天に向かって叫ぶ。 詰まるところ、連れ添いであるはずの打ち止めと完全無欠に離れ離れになっていたのだった。 その叫びを聞いて一部過去に彼を襲撃して返り討ちになった不良達がすいませんでしたー!、等と 叫んで逃げて行くが、一方通行はそれらは全く気にせずに周囲を見渡した。 見渡す限りの人、人、人、馬、人。 見事に人だらけである。正直気が滅入った。 打ち止めの身長はそこらの小学生と変わらない。 この人の多さでは埋もれてしまい、見つけるのはとてもでは無いが無謀というものだ。 しかし、一方通行は、そんな事など知らないとばかりに足を動かし始める。 「あァ、なンでこンなトコで居なくなりやがンだァ……俺に恨みでもありやがンのかァッ!?」 恨み言を吐きつつ、一方通行は身体の状態も気にせず突っ走りはじめた。 速い。 地面に敷き詰められたアスファルトを砕くとまではいかないが、相当強い踏み込みの音が周りに響く。 その音に驚き、道を開ける人々。 一方通行は打ち止めを探して周りを見渡しつつ、モーゼの十戒の様に割られた人の群れの中を走っていく。 しかし、それでも人の流れというものは常に変化するものだ。 「きゃぁっ!?」 突如響く悲鳴。 走ってでもいたのか、開いた道のど真ん中に飛び出して一方通行にぶつかり、勢い良く尻餅をつく少女。 「あァ?悪りィな、ぶつかっちまったかァ?」 一方通行はそれを見て、自らにかかる慣性を適当に反射分散させて急ブレーキをかけた。 一応、一方通行も僅かばかりの礼儀作法というものは身に付けているのだ。 それでも、打ち止めと出会ってから大分マシになったという程度だが。 「あたた……うぅ、あなた、あぶな――ひッ!?」 「あン?」 少女は一方通行の姿を見るといきなり怯えた表情になり、固まってしまった。 一方通行は訝しげな顔をして目の前の少女を見る。 紺色の、前のチャックを開けたジャージを着込み、長髪を後ろで二つに結った髪型。 その髪の下には今にも泣き出しそうな怯えた少女の顔。 どこかで見た事があった、と一方通行は思う。しかも、極最近に。 「ひ、あ……」 一方通行が首を捻りながら誰だったか、と考えている間、少女は起き上がろうともせずに固まっていた。 どうやら腰が抜けているようだ。 ちなみに一方通行には怖がられる心当たりはありすぎる程あったりするので相変わらず気にしてはいない。 その間にも一方通行は思考を走らせ、記憶を掘り起こす。 学園都市最高の頭脳を持つ一方通行の記憶力は伊達では無い。 目の前の少女と一致する姿を検索する。 そうして数秒後、該当したのは―――、 「あァ、そうだ。オマエはあれか。あン時の三下かァ?」 ビクリ、と少女の肩が跳ね上がる。 少女は咄嗟に立ち上がって逃げようとするが、一方通行はそれを許さない。 逃げようとする少女の両肩を掴むと、少女が以前に見た事があるような邪悪な笑みを浮かべて言った。 「丁度良い。オマエ、確か"空間移動"出来たよなァ?ちょっとやって貰いてェ事があンだけどよォ」 一方通行の目の前では、少女が寒さに震えるハムスターの様に涙目で凄い勢いを付けつつ頷いていた。 突然だが、結標・淡希は"空間移動"の亜種である"座標移動"という珍しい能力の持ち主である。 簡潔に言えば、手で触らずとも物体を座標Aから座標Bまで移動させる事が出来るという能力だ。 しかし、結標の肩をガッシリと掴んでいる最強――"一方通行"の能力はその更に上を行っている。 その能力とはあらゆる力の"ベクトル"の操作。 ありとあらゆる攻撃を跳ね返し、己の力を倍加する能力はまさに最強の名に相応しいものだ。 その最強は現在結標の肩をガッシリと掴んでいた。 その表情はとても嬉しそうだ。 まるで獲物に狙いを付けた肉食動物の様な獰猛な笑み。 ……あ、死んだ。 結標は知らず絵的に真っ白になった。 金属を叩く音でも鳴らしたら良く響きそうな程の静寂が満ちる。 周囲の雑踏などまるで気にしない。 というか、まるでどこかのステージの様に結標と一方通行の居る場所は開けていた。 なんだか他人が遠い。 今居るのは狩人と獲物の二匹のみである。アデュオス、この世。こんにちはあの世。 一方通行は魂の抜けている結標の肩から手を離しつつ、凶悪な笑みを引っ込めた。 どうやらもう逃げる心配は無い、と思ったようだ。 魂が抜けたままの結標は勿論、なんの反応も寄越さない。 「ンじゃ、いっちょ高く飛ばせ」 いきなりの命令系。 この少年、能力どころか性格まで理不尽のようだ。 ハッ、と一方通行の声をきっかけに意識を三途の川付近に飛ばしていた現実へと戻ってくる結標。 見上げてみれば、辺りをキョロキョロと見回している一方通行が目に入った。 何か探し者だろうか、と結標は呆然とした頭で首を傾げるが、その様子に気づいた一方通行は、 「トロトロしてねェでさっさと飛ばせ」 「と、飛ばす?」 イライラしたような視線を向けられて思わずたじろぐ。 結標は状況を理解しようと脳が全力回転するがまだ結果を導き出すまでには至っていない。 地響きがしたと思ったら誰かとぶつかり、注意の一つでもしてやろうかと思ったら、目の前には最強の能力者。 これはなんの悪夢だろうと思う。 「だァーから、とっとと飛ばせつってンだろォが!」 「は、はひっ」 声が思わず上擦る。 しかし、結標は、そんな事すら気になら無い程混乱したまま能力を行使した。 勿論そんな状況で使った能力が上手く行くはずもなく。 「……」 一方通行がぽふ、と地面に着地した。 総飛距離十センチ。結標・淡希、夢の新記録である。 「あァ~……」 一方通行は呆れた様な顔で声を出した後、表情をすぐさまとてつもなく良い笑顔に切り替る。 そして、結標を首だけ動かして見下ろし、 「よォし、いっぺン死んでみっかァ?」 「ごごごご、ごめんなさいぃー!」 涙目のまま左右へと凄い勢いで顔を横に振る結標。 それにしてもこの結標、ビクビクである。 「次はねェと思え?」 「うぅぅ……なんなのよぉ……」 良い笑顔のまま肩を叩く一方通行。なにやら肩がビリビリと痺れる。 顔を向けて見れば、なにやら一方通行の手から青白い火花が出ていた。 「生体電気って、やろうと思えば結構出力出るンだよなァ」 「つ、謹んで受けさせていただくであります、ハイ!」 尻餅をついたまま思わず敬礼をしてしまう。 かなり間抜けな格好の上に涙目と合わさって何やら一種の同情すら感じさせる光景だ。 実際、周囲の人々の哀れみの視線が痛い。 「悪りィな。ちっとバカがどっかにいっちまったもンだからよォ」 「悪いと思うなら最初から―――」 「血行を良くしてやンのもオツだよなァ?」 「と、飛んでけーっ!」 即座に計算式を組み上げて一方通行を空高くに"座標移動"させる。 先ほどまで一方通行が立っていた位置の遥か上空で、彼は何かを探すように周囲を見渡している。 ……そういえば、"バカ"って誰の事かしら……? 目の前から一時的にとは言え、悪夢が消え去り少しはまともな思考になる。 一方通行が探すような重要人物。 ……まさか、あの資料に載っていた女の子? 写真で見た一方通行を支える少女が脳裏に浮かぶ。 成る程、必死になるわけだ。 あの少女が居なくなればあの学園都市最強は最強ではいられないのだから。 そう、仮初でも"目的"が無ければ生きていられない、今の結標の様に。 「……」 少しだけ。ほんの少しだけ、何故だか結標は一方通行に親近感を覚えた。 ……何を馬鹿な。一方通行は復讐すべき敵なのよ。敵。 頭を振ってその考えを振り払う。 罅割れた心を支えるために必死になって否定する。 それを認めたらまた心が砕けてしまいそうだから。 「っと、いやがらねェ。あのクソガキ……どこに行きやがったンだァ?」 唐突に軽い足音を立てて着地してくる一方通行。 十何メートルは飛ばしたはずなのにほとんど音も無く着地してくるなんてやっぱり化物だ。 一方通行はコチラへと向き直り、何故か少しだけ驚いた顔をする。 何かおかしい事でもあっただろうか、と首を傾げるが該当件数は零だ。 ふと、一方通行は表情を切り替える。 予想もしない表情、僅かながらも自然な笑みを漏らすものへとだ。 「あァ?まだ居やがったのか、三下」 「は、え?」 思わぬ一方通行の表情と言葉に呆然とする。 それもそうだろう、先程まで一方通行は遥か上空だったのだ。 そんな状態で人探しとなれば、下にいる雑魚の事など、彼が気にすることはまずないだろう。 それでも結標は逃げずに残っていた。 心配されたとでも、一方通行は思ったのだろうか。 実際はそんな事考えてもおらず、ただ単に考え事に耽っていただけなのだが。 「まァ、取り敢えずはだ――」 一方通行はそのまま愉快そうに背を向け、片手を上げた。 そのまま一歩歩き出して、呆然とする結標へと声をかける。 「――"アリガトウ"ってなァ。手伝い、感謝するぜ、三下」 思わぬ発言だった。 絶対にお礼なんて言うはずが無いと思っていた人物からの不意打ち。 しかし、結標は何故か少しだけ、ほんの少しだけその言葉に妙な安らぎを覚えた。 今はまだその妙な安らぎこそが結標の求めるもの、必要とされたいという願いの延長だという事も わかってはいないのだが――確かに結標の心に一つの強い願望が生まれた。 その少しの、ほんの少しの妙な安らぎを、もっと欲しいと思ってしまったのだ。 だから、計算なんかよりも先に体が動いた。 「ちょ、ちょっと待って!」 「あン?」 気づいた時には結標は何故か一方通行の腕を掴んでいた。 キョトンとした顔で振り向く一方通行。 弾き飛ばされないトコロを見ると、どうやらぞんざいに扱う気はないらしい。 「なんだァ、三下。もう用はねェぞ?」 「そ、そうじゃなくて……」 思わず手を離して、もそもそと結標は口の中で呟く。 一方通行は呼び止められた事に少しだけイライラしているようだったが、 取り敢えずはその様子を訝しげに見るだけだ。 結標は深呼吸を一つ。思い切り勢いをつけて一方通行を指差しながら告げる。 「わ、私も人探しを手伝うから、携帯番号教えなさい!」 「……はァッ?!」 間を置いて、考えを纏め、思わず間抜けな声を雑踏の中で上げる一方通行。 もう結標にも何がなんだかわからなかった。 ○ 「あれ?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」 青いワンピースを着込んだ幼い少女は、とある歩行者用道路の上で可愛らしく首を傾げた。 薄い茶色というよりもオレンジ寄りのショートカットに頭頂部で揺れる髪の毛。 ただいま現在進行形で自分で絶賛迷子中の"打ち止め"はうーん、と唸り始める。 「やっぱり離れ離れになってるんだなぁ、あっはっは、ってミサカはミサカは自暴自棄になってみる」 腰に手を当て、豪快に笑う打ち止め。 色々いっぱいいっぱいなのだ。 「はぁ……って、ミサカはミサカは一人寂しく溜息をついてみたり」 しかし、その強がりもいつまでも続くわけでは無い。 一頻り笑った後に来る虚無感。簡単に言えば虚しいだけだったりする。 「待てや、この馬鹿猫ぉおおおお!何時まで走らせる気だ、ぜぇぜぇ、おおおおおお!」 何か暑苦しい叫び声が打ち止めの向いている方向。 その右側に並ぶビルの間、恐らくは路地裏へと続く道から気合の声と共に凄まじい足音が聞こえてくる。 そして飛び出してくる毛並みの良い猫とツンツン頭の少年。 一瞬何事かと思ったが、ツンツン頭の少年の方には覚えがあった。 打ち止めが直接会ったわけでは無い、しかし、確かに覚えがある顔だ。 約一万人の同じ遺伝子を使って作られたクローン"妹達"。 その一万人が己の能力を使い構成するミサカネットワークにより、打ち止めは少年を知っていた。 上条・当麻。 その右手に"最強"であろうと殴り倒すような力を秘めた"最弱"だ。 つい数週間前に起こった事件でも"妹達"の一人、一〇〇三二号、御坂妹が世話になった少年だった。 「うぉおおおおおおおーッ!」 太陽を背景に猫へと飛び掛る少年。 そのまま見事に猫を抱きしめ、地面を二転、三転。停止する。 「……ミサカはミサカは思わぬデッドヒートに言葉を無くしてみる」 「あだだだ、つぅ、肘擦り剥いたぁ~」 むしろ其の程度で済んでいるのはおかしいと思うのだが。 呆然としている打ち止めを余所に猫を抱きかかえて起き上がる少年。 打ち止めはそれよりも先に動きを取り戻し、少年へと駆け寄った。 そのまま笑顔で頭を撫でている少年へと声をかける。 「大丈夫?ってミサカはミサカは優しげに心配してみたり」 「ん?あぁ、大丈夫って、ミサカ?ミサカって……ってうぉい、御坂妹が小さくなってやがる!?」 「む、失礼な。これでも一応ミサカは立派なレディだよ?ってミサカはミサカは胸を張りつつ主張してみる」 猫が暴れるが上条は全く動じない。 というよりも目の前の小さくなった御坂妹こと打ち止めに視線が釘付けになっていた。 「ど、どういう事でせうか!?これは狸型ロボットの新兵器のせいでございますか!?そうなんですね!?」 「あのー、もしもーし、聞こえてるー?ってミサカはミサカはジト目で手を振ってみたり、聞いて無いですか、そうですか、 ってミサカはミサカは疲れたように肩を落としてみる、よよよとミサカはミサカは嘘泣きもしてみたり」 暫くの間、猫が暴れる音と、少年の叫び声、そして少女の落胆の声が響いていた。 道を行く人々が変な視線を送ってくるが気にしもしないそんな二人と一匹の組み合わせであった。 一方其の頃、かなり離れた場所で結標が一方通行に対してある種の爆弾発言を放っていたのを打ち止めは知らない。 学園都市のとある商店街。 其処を疾風のように走り去る一つの人影があった。 「ああぁあああああ―――ッ!」 馬鹿みたいな叫び声が商店街に響く。 道を行く人々の幾人かが驚きの表情で人影を見るが、その時には既に遥か遠くに走りさった後だった。 その人影の正体――結標・淡希は顔を真っ赤にして走っていた。 結標は数十秒前までの出来事を思い起こす。 『あァ?なんで俺がオマエに携帯の番号なんか―――』 『良いから教えて!』 あの爆弾宣言から暫く固まっていた両者だったが、先に沈黙を破ったのは一方通行の方であった。 しかし、一方通行の発言はすぐさま結標の悲鳴にも似た叫びに掻き消される。 結標は自分でも何を言っているのかわからなくなりつつも、必死に一方通行を睨みつける。 顔を真っ赤に染めた涙目の表情で迫られ、流石の最強も怯んだのか渋々と言った感じでポケットに手を突っ込む。 一方通行の取り出した携帯を見るなり、結標も慌ててジャージの上着ポケットから携帯を取りだす。 そして、互いの登録情報を交換して即座に、 『そ、それじゃ、見つかったら連絡するわ!じゃあね!』 『あ?って、速ェな、ォイ!?』 そのまま背を向けて走り去っていってしまったというわけだ。 そして、現在に至る。 正直なトコロ、結標は混乱していた。 一体自分は何を考えているのか、それすらもわからないのだ。 いや、本当はわかっているのだろう。 しかし、それを認めてしまっては、それをキッカケに己の心を"以前"の様に自分で壊しかねない。 それとは別の理由もかなりの割合で混じっている気もするのだが、それには目を向けようともしない。 ……これは敵の情報を知るため!知るためなのよ! そう自分に言い聞かせてなんとか心の均整を保つ結標。 その間にも彼女の疾走は止まらない。 ついには商店街を抜け、道路へと出た。 目の前にはアスファルトで固められた道路とそれを渡るための横断歩道。見上げてみれば信号が設置してある。 結標は信号を碌に見ずにそのまま横断歩道を渡りきる。 途中、なにやら叫び声と共に車のクラクションが鳴り響く。どうやら赤信号だったらしい。 渡った場所から少し走ると今度は緑が豊かな公園へと突入した。 と、ふと其処で結標は足を止める。 そして、ジャージの上着ポケットから携帯を取りだす。 二つ折りになるタイプの携帯を開き、幾つか操作をして電話帳を開いた。 緊張のためか顔が真っ赤になっているが、それは走ったせいだと自分を納得させた。 「えぇっと……一方通行の電話番号は……」 確認、確認、と携帯を弄り回す結標。 そういえば本名知らないわね、などと思いつつ見覚えの無い名前を探して行く。 暫くの間、平日のためか誰も居ない公園に携帯のボタンを押す電子音が響いた。 しかし、一方通行の本名と思わしきものは一向に見つかる気配が無い。 ……? 首を傾げる結標。 もう一度見るが、やはり見慣れた感じのする名前しか並んでいない。 例えば、一方通行とか。 「………」 見間違えたのかと、目を擦ってもう一度画面を見直す。 『一方通行 プロフィール』 「って、そのまま!?」 期待を大きく裏切る変化球に思わず叫びを上げる結標。 まさか呼び名をそのまま自分の携帯に登録するなど夢にも思わないだろう。 面倒臭がってこんな風にしたのだろうか、それとも名前すら忘れたか。 後者はなさそうなので恐らくは前者だろう、と結標は結論を出すと携帯を閉じて上着へと仕舞った。 深呼吸を一つ。 酸素を取り入れ、冷静になるため、脳を正常化させた後、すぐさま全力回転させ始める。 よし、と気合を入れるために声を上げる。 まずは状況の整理。 一つ、少女を探しだして、一方通行に連絡する。 二つ、少女から一方通行の弱点を聞きだす。 三つ、少女を一方通行へ引き渡し、褒めて貰う。 実は未だに冷静ではない思考の結標であったが、全く気にする様子もなく顎に手を当てて考えるポーズをとる。 ……問題はどうやってあの子を探すかよね。弱点を聞きだすとしたら一方通行より先に見つけなきゃいけないし。 一方通行がアレだけの上空から探したのに見つからなかったのだ。 恐らくは、かなり遠く。 もしくは何かビルの影になる様な場所に居るかのどちらかだろう。 取り敢えずは、 「足を使うしかないわね」 そう言って結標は早速一歩踏み出す。 何か踏みつけた。 「ひゃぁっ!?」 「だーうー」 何事か、と結標は妙な感触のした地面を見る。 其処にはなにやら白い衣装に身を包んだ少女が倒れていた。 なにやら力無く倒れる少女の身を包む衣装は良く見れば昔見た本に乗っていた修道女の服の様にも見える。 その暫定修道女は情けない声を上げつつ、コチラを見やる。 「お~な~か~す~い~た~」 「……」 捨てられた子猫のような目と言うのが、この場合の表現としては正しいだろう。 実際、少女の脇の下辺りから子猫が出てきて『いきなりすまないね、お嬢さん』的な視線を送っている。 この場合、飼い主と猫と見るべきだろうが、なんとなく結標には逆に見えた。 猫が保護者で少女が子猫っぽいのだ。 「おなかすいたって言ってるんだよ?」 「えぇっと……」 今度は体を引き摺るようにしてコチラへと方向転換する少女。 猫の方はしっかり少女の背中の上に避難している。 「……」 目の前の少女はなんなのだろうか、と結標は考える。 ……シスター、かしら?神学系の学校はこの辺りには無かったと思うけど。 それにしても妙な衣装だと思う。 なにしろ妙に豪奢な布を強引に安全ピンで止めている様な状態なのだ。 見た目としてはかなり豪華さと仕上げのバランスが悪い。 なんらかの意味合いがあるのだろうか、と結標が少女を凝視していると少女は、 「あのー、もしもし、聞いてる?」 「あ、ごめんね。なにかしら?」 ハッと思考の海に埋没していた結標は現実に戻ってくる。 それと同時に困ったような笑みを浮かべて目の前の暫定修道女である少女の目を見た。 綺麗な碧眼に腰まではありそうな銀髪。 どこをどう見ても日本人ではなさそうであったが、どうやら日本語は通じるようだ。 「えっと、とうまが道端で困ってたおばあさんの猫を探して走り去っちゃったから、お昼ご飯がないの」 とうま、というのはどこかで聞いた事があったが、取り敢えずは保護者の事だろう、と結標は納得する。 「大変ね。それで、私はどうすればいいのかしら?出来る限りの事なら手伝うわよ?」 すっかり子どもの相手モードに入った結標は笑顔を浮かべつつ腰を落として少女の顔を見る。 整った可愛らしい顔だ、と結標が評価を下していると少女はパッと顔を輝かせるように表情を変えた。 要求の予想は大体ついていた。 恐らくは、保護者である"とうま"という人物を一緒に探して欲しいとかそういうものだろう。 見た目でしか判断出来ないが、この年頃の少女は強がりと同時に寂しがり、怖がりでもあるのだ。 ……人探しなら、コチラの探し人も見つけられて一石二鳥というものだし。 結標は頭の中で人探しの計算も整えつつ、少女の次の言葉を待つ。 少女は流石に初対面の人になにかを要求するのは躊躇っているのか、モジモジとした後、 「ほ、ほんとう?」 「ええ、本当。お姉さんになんでも言ってみなさい?」 やはり躊躇いがちに聞いてくるが、結標は至って笑顔で応える。 こういう子の相手は怖がらせてはいけない。 笑顔で、優しく語りかけて上げるのが重要なのだ。 「それじゃあ……」 言葉を続ける少女。 なんとなく力がさっきより失われているようにも見える。 そして、飛来した少女の言葉は少々結標の予想とは違うものであった。 「なにか、食べ物を分けてほしいかも……げふ」 その言葉を最後にまた倒れ伏す少女。 暫しの間。 それほど長く無い間の後結標は思わず頬を書きつつ困ったような表情で苦笑いを一つ。 なんだか今日はまだまだ忙しくなりそうであった。 ○ 「つまりアナタはおばあさんにこの猫を届けるの?ってミサカはミサカは並んで歩きつつ聞いてみる」 「ミサカはミサカは、って重複してるよなぁ――まあ、そうだな。家までの地図も貰ってるし」 打ち止めと上条・当麻はとある商店街の道路を並んで歩いていた。 先程、上条が歩道で、ついに猫を捕獲した時に出会ったのだが、最初は随分と驚いた。 なにしろ、知っている少女が頭二つ分ほど縮んだように見えたのだ。 それはもう、新手のスタンド攻撃とかそういうものかー!などと意味不明な事を叫びそうになるほどだった。 なんとか落ち着き、自己紹介を済ませ、逃げようとした猫を確保するのに数十分。 随分と時間が経ってしまった。 周りでは、昼時だからか、この都市の象徴は科学だというのに無駄に熱い売り文句を叫ぶが響いている。 『安いよ安いよ!今ならこのサーモンピンクの河豚から取り出した実験食材がたったの――』 訂正しよう、やはり此処も例に漏れず科学万歳な場所のようだ。 その事実に半場安心しつつ、上条当麻は隣に並ぶ少女を見やる。 つい一ヶ月とちょっと前に知り合った少女達、御坂妹を含む約一万人の"妹達"。 その"妹達"全員に会ったわけでは無いが、この目の前の少女はなんとなく"妹達"の中でも特殊な気がした。 なんとなくあの"妹達"独特の雰囲気とは違い、妙に活発的な雰囲気が漂っているのだ。 今も物珍しそうに辺りを見回しては、変な物に興味を惹かれているようだ。 「おぉ、あれなんて中々格好良いかも、ってミサカはミサカは埴輪を見つつ目を輝かせてみる!」 本当に楽しそうだなぁ、と上条は笑顔で打ち止めの指さした方向を見る。 其処には、山積みにされた、妙にリアルに人の顔を模した埴輪があった。 正直、それが山積みになっている景色は不気味を通り越してある意味、荘厳だ。 「はは……」 思わず笑顔が引きつる上条。 やはりこの少女の感性は特殊で、少々斜め上に行っているようだ。 「おぉ、あれも珍しい!ってミサカはミサカは駆け寄って行ったりするー!」 楽しそうに左右に展開する店の前に飾られた展示品などの前を行ったり来たりする打ち止め。 どうやら出かけたりするのは稀らしい、と上条は微笑ましい光景を見つつ思う。 猫が腕の中で欠伸をかく。 どうやら追いかけている間に良きライバルとかそういうものと思われてしまったらしい、妙に友好的だ。 「まぁ、取り敢えずは……」 今日は平和だなぁ、と何か記憶の隅で蠢く白い悪魔の存在を敢えて忘れつつ、上条は空を見上げる。 取り敢えずは商店街の空はテントの様な物で隠されていて見えなかった。 視線を戻せば、打ち止めがまだまだ元気そうに走り回っていた。 そういえば、と上条は頭の隅に引っかかった事を言葉にする。 「そういやさ、お前、一体誰と此処まで来たんだ?」 「あ、そうそう。とミサカはミサカはアナタの下へ戻ってきつつ頭の中で情報を整理してみたり」 独特な口調にもそろそろ慣れ始めた上条の腕の中で猫が鳴く。 再び上条の横に並んだ打ち止めは自分が何故一人で居たか、何故相方が迷子になったか。 その理由を、色々改変しつつ話始めるのであった。 ○